第49回宮崎県医学検査学会抄録 

0 1

術中腹水細胞診で組織型を推定しえたバーキットリンパ腫の一例

医療法人同心会 古賀総合病院 臨床検査技術部

寺田 一弥

【はじめに】

バーキットリンパ腫は、c-myc遺伝子(8q24)と免疫グロブリン(Ig)遺伝子の相互転座に起因する高悪性度B細胞性腫瘍である。今回、術中腹水細胞診で組織型を推定しえたバーキットリンパ腫の一例を経験したので報告する。

【症例】

83歳、女性。2010年2月下旬より右側腹部痛が出現。前医にて腹部CTを施行したところ、後腹膜に8×15cm大の腫瘤を認めた。3月15日、精査加療目的で当院に紹介入院となった。入院時、末梢血中に異常細胞を認め、骨髄検査を施行された。また、腹腔内腫瘤に対し開腹生検を施行し、術中に腹水を認めたため細胞診検査も施行された。

【腹水細胞診所見】

ギムザ染色にて、中型で類円形の腫瘍細胞が孤立散在性に多数みられた。腫瘍細胞はN/C比が高く、好塩基性の細胞質に打ち抜き状の小空胞がみられた。

【表面マーカー・染色体検査】

陽性マーカーはCD10、CD19、CD20、CD23、λ-chで免疫グロブリンによるクローンが確認された。また、G-BANDは増殖不良、FISHにてIgH/C-MYCで融合シグナルを83%認めた。

【腫瘍組織所見】

ジグソーパズル様の配列でびまん性に増殖しており、核片を貪食するマクロファージを多数認め、starry sky像が見られた。腫瘍細胞は、中型〜大型で核は類円形、クロマチンは細顆粒状で、複数個の小さな核小体がみられた。以上より、バーキットリンパ腫と診断された。

【まとめ】

ギムザ染色は簡便な染色であり、かつ迅速診断に有用である。今回細胞診標本において、バーキットリンパ腫の特徴の一つである小空胞の観察にはギムザ染色が適していた。バーキットリンパ腫は一般に予後が悪く迅速な治療が必要である。特徴的な細胞像より診断が可能であることから細胞診は有用であると考えられた。

連絡先 0985-39-8930

02

バセドウ病と合併した甲状腺乳頭癌の2例

医療法人 同心会 古賀総合病院 臨床検査技術部

新原 康雄

【はじめに】

バセドウ病と甲状腺癌が合併することは比較的稀とされていますが、今回当院でバセドウ病と合併した甲状腺乳頭癌を経験したので報告する。

【症例】

症例1:患者: 47歳・女性

既往歴:眼球突出で古賀駅前クリニックを受診。血液検査で FT3 7.92、FT4 2.30、TSH 0.01、TRAb 12.7。バセドウ病と診断された。甲状腺超音波検査で右葉下極に 4.1mm大、左葉上極に 6.0mm大の結節を認め、細胞診で乳頭癌が示唆された為、当院の内分泌外科へ紹介となった。

超音波検査:甲状腺サイズは、右葉が58×17×13mm、左葉が54×19×12mm、峡部が2.8mm。甲状腺実質はやや粗雑。右葉下極に2.5×2.4×4.1mm縦横比大の形状不整・境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め、左葉上極に4.2×4.7×6.0mm縦横比大の形状不整・境界不明瞭・微細な高エコーを伴う低エコー腫瘤を認められた。

症例2:47歳・女性

既往歴:胸部症状にて紹介医を受診した際に甲状腺機能亢進症を指摘され、当院を紹介された。血液検査では、 FT3 9.72、FT4 3.72、TSH 0.01以下、TRAb 2.2。バセドウ病と診断された。甲状腺超音波検査で左葉に9mm大の結節を認め、細胞診で乳頭癌が示唆された為、当院の内分泌外科へ紹介となった。

超音波検査:甲状腺サイズは、右葉が58×17×13mm、左葉が54×19×12mm、峡部2.1mm。甲状腺実質はやや粗雑でした。甲状腺左葉中極に、 6.4×6.5×5.4 mm の形状整・境界明瞭・内部エコー均一な等エコーを認めた。

【結果】

症例1・症例2ともに細胞診において甲状腺乳頭癌と診断された。また、病理診断おいても甲状腺乳頭癌であった。

【まとめ】

バセドウ病と合併した超音波上対照的な甲状腺乳頭癌の2例を報告した。超音波機器の向上により、私的診断がかなりの部分で可能となってきたものの、現在でも濾胞性腫瘍をはじめとして鑑別困難な症例もみられる。

今後、超音波技術及び、画像の分析のさらなる向上をはかっていかなければならないと思われる症例であった。

03

尿一般検査室における尿検体分取装置IDS-880の運用と効果について

宮崎大学医学部附属病院検査部

○猪崎みさき、石黒隆一、山本成郎、梅木一美

【はじめに】

当院の尿一般検査室は、本年5月に運用開始した新外来診療棟へ中央採血室と共に移動し、これに伴い新尿一般検査システムを導入した。今回、このシステムの運用と効果について、これまでの経験を報告する。

【検査の流れ】

1)患者の検査受付:医事受付を行った患者は、中央採血室の採血・採尿自動受付機受付を行う。バーコードと氏名が印字された採尿カップを受け取り、採取後検査室窓口へ提出する。
2)検体の分取・受付:提出された尿カップは尿検体分取装置IDS‐880への装填により、検体の自動発番と同時に最大4管種の検体容器に分注される。3)検査・報告:分注された尿一般の検体は、自動分析装置により定性と尿沈渣を測定し、一定値を超えた検体は目視による鏡検を行う。

【業務上の効果】

1)検体容器取り違いの防止:検体分取のバーコード運用により、検体や容器の取り違い防止が可能となる。2)検査の迅速化:診療前検査の入力により患者は診療科受付前に採尿し、直接検査室に提出するため、搬送の時間が短縮され検査の迅速化につながった。3)人的省力化:これまでは診療科で採尿後、各科担当者が分注し検査部へ提出していたが、この業務がなくなり各診療科の省力化につながった。検査部としては、尿の分注処理、患者との対応業務に午前中1名の技師が専従する事となり、業務が増える結果となったが、病院全体としては人的省力化につながったと思われる。4)問題点:分取装置が大型のため、ある程度のスペースを要する。本システムでは尿カップに添付したバーコードラベルは1枚しか読む事が出来ないため、依頼ラベルが2枚以上貼付された場合、2枚目以降はマニュアルで受け付けるため業務が煩雑となる。

【まとめ】

今回、尿一般検査室が新外来診療棟に移動した事で、外来患者の尿検査の採尿・分取(一部検査を除く)から検査までの一元化を行う事ができた。また、採尿に来た患者と接する事で、患者の状態や、疑問、問題点等を知る事が可能となった。今後、これらの状況に応じた改善を行い、これからの検査サービスに役立てたい。

【連絡先】 0985-85-9768

04

当院における輸血副作用の現状報告

同心会 古賀総合病院

田爪 聡子

【はじめに】

輸血療法を適正かつ安全に施行するために、輸血副作用について把握することは極めて重要と言える。 近年、日赤血の保存前白血球除去が導入されたことで、輸血副作用は減少傾向を示している。

今回、我々は保存前白血球除去製剤の使用開始後の輸血副作用発生状況について検討したので報告する。

【対象】

期間は2008年6月から2010年5月に実施された輸血3226バッグで、その内訳は赤血球製剤2125バッグ、血小板製剤700バッグ、血漿製剤234バッグ、自己血167バッグを対象とした。

【結果】

副作用報告書回収率は100%であった。輸血副作用報告は44件で発生率1.36%(赤血球製剤0.40%、血小板製剤0.90%、血漿製剤0.03%、自己血0.03%)であった。副作用の内訳は、悪寒・発熱が59%、蕁麻疹14%、皮膚掻痒7%、悪心・嘔吐7%、痛み5%、発疹4%、呼吸困難2%、血圧低下2%であった。製剤毎では赤血球製剤、悪寒・発熱38%、悪心・嘔吐23%、痛み15%、発疹・呼吸困難・血圧低下共に8%。血小板製剤は悪寒・発熱が66%、蕁麻疹21%、皮膚掻痒10%、発疹3%。血漿製剤・自己血製剤は共に悪寒・発熱のみであった。

保存前白血球除去開始前の当院の統計では輸血副作用率5.34%(赤血球製剤1.53%、血小板製剤1.91%、血漿製剤1.91%)であり、輸血副作用の内訳は、悪寒・発熱66%、蕁麻疹20%、その他14%であった。製剤毎では、赤血球製剤は発熱・悪寒が70%。血小板製剤ではアレルギー系副作用70%、悪寒・発熱30%。血漿製剤は悪寒・発熱のみであった。

【まとめ】

保存前白血球除去製剤導入後は、発熱性・アレルギー性副作用ともに減少しており、中でも血小板製剤によるアレルギー性副作用が減少していた。

今後、更なる輸血療法の安全性に務めるとともに、輸血療法委員会を中心に輸血勉強会等の立案に繋げていきたい。

05

日南・串間医療圏における時間外緊急心臓カテーテル検査体制の
二年間の取り組みと方向性について

県立病院 臨床検査科    

○ 津曲洋明・元明秀成・丸元香菜・増田由美子・酒井民子・佐野亜由美

山口佳織・谷口慎一郎 ・西岡美穂・久方尚一・吉田万恵

はじめに

 日南病院は日南・串間医療圏における二次救急医療機関として、県の医療計画の中でも位置付けられている。また、管内の死因3大疾患は悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の順で、1位と3位は、地域の中核病院として体制もほぼ整備されてきている。しかし、24時間対応の心疾患への対応がまだ十分でなく、特に時間外の心筋梗塞等の緊急心蔵カテーテル(PCI)検査体制の整備が当面の重要課題と思われた。このため、3名の循環器専門医を軸として平成21年度より、チーム医療体制の整備にこれまで取り組んでいるのでその内容について報告する。

期間及び方法 取り組み期間:

平成21年5月〜平成22年10月末まで、方法:循環器医師・臨床検査技師・看護師・臨床工学士・診療放射線技師の5職種の代表者による会議で、取り組みの方向性を検討協議した後、院内の代表者会議の承認を得て、各チームメンバーの研修を行い、実施することとした。

結果 

1) 21年度、臨床検査技師は時間外緊急PCI検査を日南在住の4名が毎週月曜日から木曜日の時間外に自宅待機で担当し、患者搬送時の準備は検体待機者が全員行えるように、生理担当者が作成した時間外心カテマニュアルに従い、8月までに実技研修を行なった。そして、9月より4名体制で、9名の時間外緊急PCI検査を行った。

2) 22年度は定期異動により日南在住者の経験者が2名となり、継続のため体制の見直しを強いられ待機者が緊急PCI検査を行うことに変更した。実技研修は10月までの毎週火曜日と金曜日の時間内心蔵カテーテル検査日に未経験者6名を段階的に行い、11月から、正職員9名全員の院内検査待機者が行う1名体制に変更した。

考察

  院内検体待機者が時間外緊急PCI検査を行い、緊急輸血や緊急患者検体検査が同時に重なり、1名対応が困難な場合のみ日南在住者を呼び出すことで、経費の節約とこの部門の365日緊急対応が可能な臨床検査科の体制が構築でき、チーム医療の強化による地域貢献が可能と思われる。

連絡先 0987-23-3111

06

当院検査部におけるチーム医療
〜現状と課題〜

宮崎江南病院 検査部

○花牟禮富美雄、野口裕史、篠崎寿好、大窪美智、黒木恵美、清真由美

【はじめに】

現在の医療はチーム医療を基本としており、医師を中心に看護師、臨床検査技師、放射線技師、薬剤師、管理栄養士、医療事務職などの各専門医療職が協力して患者の診断・治療に当たっている。当院においても臨床検査技師がチーム医療の一員として参加・協力しており、今回はその現状と課題について報告する。

【臨床検査技師が参加するチーム医療】

1.栄養サポートチーム(以下、NST)

当院では2002年6月より全科型NSTを立ち上げた。2010年度診療報酬改定においてNST加算が新設され、算定するために2010年4月より活動内容を見直し、臨床検査技師の負担も増加した。臨床検査技師の主な活動内容は、NST回診・ランチタイムミーティングへの参加、提供資料の作成、NST研修会での講師である。

2.院内感染対策委員会

臨床検査技師の主な活動内容は、各種耐性菌のモニタリング、手洗い用水道水培養検査、院内感染対策だよりの発行、研修会の実施検討である。

3.がん治療支援チーム委員会

近年、がん患者の治療は多様化しており、当院では2010年4月、積極的にがん患者の治療をチームとして支援していくことを目的に活動を開始した。臨床検査技師の主な活動内容は、委員会・症例検討会への参加、対象患者の検査データ抽出と提供である。

4.その他のチーム医療

外来患者採血、心臓カテーテル検査、医療安全管理、クリニカルパスの検討、などである。

【結語】

 臨床検査技師が、検査データを提供するだけでは無く、チーム医療に積極的に参加するようになった今、臨床の現場で少なからず存在感を示すことができるようになった。しかし、専門外の知識の習得や認定資格の取得、業務量の増加、など負担も増加した。また、診療報酬に反映されない、検査部内での協力体制が不十分、など課題も多い。

連絡先 0985-51-7575

07

BCR-ABL1を伴う混合形質性急性白血病の一症例

県立延岡臨床検査科

○黒木祥子、西脇恵美、野中真由美、中村香穂子

【目的】 

t(9;22)(q34;q11.2)BCR-ABL1を伴う混合形質性急性白血病は、白血病全体の約1%未満と考えられており、まれな疾患である。今回、上記疾患と診断された症例を経験したので報告する。

【症例】

 50代 男性  主訴:胸痛

  平成22年3月20日に腹部全体の締め付けられるような痛みが出現した。4月12日には前胸部全体が鈍く痛むようになり、胸膜炎が疑われた。更に血小板減少を認めたことから、当院紹介となった。

【末梢血検査所見】

 LDH 552 IU/L、CRP 4.79 mg/dl、WBC 3630 /μL、RBC 410×104/μL、
HBG 12.3g/dl、PLT 3.5×104/μL、血液像(Meta 1.0%、Stab 5.0%、
Seg 24.0%、Lymph 63.5%、Mono 1.0%、Eosin 0.5%、Baso 1.0%、
Blast様細胞 4.0%)

【骨髄検査所見】 

カウント:Blast様細胞93.0%(N/C比大、核型不整)

Blast様細胞:細胞化学MPO染色  陰性

フローサイトメトリーMPO陽性

表面マーカー:CD10、13、19、34、HLA-DR陽性

染色体検査:正常男性核型

FISH検査:BCR-ABL融合遺伝子 

融合シグナル6.7%(103細胞中)

【考察】

 当初、Blast様細胞が細胞化学MPO染色陰性よりALL、M0などを考えた。CD10、CD19陽性からB細胞系の白血病と思われたが、CD13が陽性を示し骨髄系の抗原発現も推測された。追加でフローサイトメトリーによるMPO検査を行い、陽性であったことからbiphenotypic acute leukaemia の基準を満していた。更にBCR-ABL融合遺伝子の存在によりWHO分類のt(9;22)(q34;q11.2)BCR-ABL1を伴う混合形質性急性白血病であると考えられた。

連絡先:県立延岡病院臨床検査科(0982-32-1681)

08

当院で経験したAML Cup-likeの1例

県立宮崎病院 臨床検査科

○福留智子、川原康彦、久方倫子、工藤万里子、釘宮弘子、平松百合子

【はじめに】

最近,白血病細胞の核の陥没した形態を示す急性骨髄性白血病(以下AML cup-like)が報告されており,AMLの一亜型として位置づけられている.今回当院で経験したAML cup-likeについて報告する.

【症例】

70歳代女性. H22.9月,椎間板ヘルニアにて近医フォロー中であったが,食欲低下,感冒症状,皮下出血を認め、また血液検査での異常を指摘され当院紹介受診.

【検査所見】

初診時の血液検査所見はWBC260,080/μl,Hb10.6g/dL,PLT2.8x10^4/μl,芽球様細胞94.6%,
LDH1094IU/L,CRP6.85mg/dL,PT51.7%,Fbg70.8mg/dL, FDP128.0μg/mL,
D-dimer63.20μg/mLとDICを呈していた.

骨髄ではNCC345,000/μl,megK15未満/μl,芽球様細胞95%であり,細胞は大小不同,高N/C,核に陥没を認めcup様の形態であった.MPO染色は陽性〜強陽性で表面マーカー検査ではCD13,CD33,CD56陽性,CD34,HLA-DR陰性であった.

染色体検査では46,XXの正常核型で遺伝子検査においてFLT3/ITD遺伝子変異が認められた.

【結果】

MPOの染色態度,表面マーカー検査ではM3やM3 variantなども考慮されたが,遺伝子検索においてPML-RARAは陰性であり,最終的にAML cup-likeと診断された.

【まとめ】

HLA-DR(-)の白血病の代表であるM3とAML cup-likeとの早急の鑑別は治療上必須であり, またFLT3/ITD遺伝子変異をもつ白血病は予後不良群のことが多く,臨床的にも正しい認識が必要である. 造血器腫瘍における形態学は私達が日常業務の中で最も早く疾患にアプローチできる術であり, 改めて形態学所見を正しく読み解くことが重要であると感じた1例であった.

【謝辞】

今回の発表にあたりご指導いただきました当院血液内科 河野徳明先生に深謝いたします。

 県立宮崎病院TEL 0985-24-4181 内線2062

09

当院で経験したマラリアの2症例  

宮崎大学医学部附属病院

○橋倉悠輝、加治麗、弓削めぐみ、井上武志、緒方陽一、梅木一美

【はじめに】

当院で経験した三日熱マラリアと四日熱マラリアの生化学、血液学検査と寄生赤血球の形態学的特徴について報告する。

【症例1:三日熱マラリア】

24歳、男性。48時間間隔の発熱、悪寒のため当院受診。ソロモン諸島の滞在歴のためマラリア感染が疑われた。

[検査所見] LD 238U/L、CRP3.32mg/dL、PCT6.1ng/mL、WBC6600/μL、RBC4.88×106/μL、PLT12.4×104/μL

【症例2:四日熱マラリア】

24歳、男性。72時間おきの発熱、悪寒、頭痛のため当院受診。アフリカのウガンダ滞在時に寄生虫感染。帰国後5日後に発熱。精査目的で当院受診。

[検査所見] LD 442U/L、CRP4.18mg/dL、WBC6200/μL、RBC3.97×106/μL、PLT11.8×104/μL

【方法】

生化学検査は東芝200FR、血液検査はコールターLH750を用いて測定した。マラリア寄生赤血球数はpH7.2緩衝液を用いたメイギムザ染色標本を用い、白血球500個中に観察されたマラリア寄生赤血球の数を求めた。赤血球サイズはオリンパスDP72/IX71 を用いて計測した。

【結果】

生化学検査においては炎症マーカーであるCRP、PCT(プロカルシトニン)とLDが高値であり、血液検査では血小板数が低値傾向であったが、メフェキシン治療とともに改善された。また、マラリア寄生赤血球数は未治療時に三日熱マラリア408個/WBC500中、四日熱マラリア37個/WBC500中であったが、メフェキシン治療とともに減少し、退院時には認められなかった。赤血球サイズは正常赤血球に比べ、三日熱マラリアでは大きく、四日熱マラリアでは小さい傾向があり有意差が認められた。

【まとめ】

マラリア感染では血小板減少、LDH上昇、総コレステロール低下、血清アルブミン低下などが高頻度にみられるとの報告がある。本症例においてもPLT低下、PCT,CRP,LD上昇などの検査所見がメフェキシン治療とともに改善された。また、マラリア寄生赤血球サイズは正常赤血球と比較し三日熱マラリアでは大きく、四日熱マラリアでは小さくなることが統計学的に証明された。

マラリア診断には血液塗抹標本を染色し原虫の有無を確認することが必須である。近年、ボランティアなどの海外派遣が増加し輸入感染症としてのマラリア感染に備えてpH 7.2緩衝液を準備しておくことの重要性を痛感した症例であった。

連絡先 0985-85-1870(内線)3117

10

データ標準化事業への取り組み 宮崎県精度管理調査での
「ビトロス5600」の評価

社会医療法人 泉和会 千代田病院 検査室

切通 博己

【はじめに】

ビトロスにおける生化学測定法はドライスライド方式を採用している。このため、少ないキャリブレーション頻度や少ないメンテナンスを実現出来ている。しかし、ドライスライドは、市販コントロール血清を使用した精度管理調査では、マトリックス効果の影響を受け、液状試薬と比較すると測定値にバイアスが生じる項目がある事が知られている。しかし近年、データ標準化事業における施設間是正サーベイでは、試料としてヒトプール血清を使用している。ドライスライドは、ヒト血清に測定値が合うように設計されているため、測定試料がヒトプール血清においては、マトリックス効果の影響を受け難いため、他方法との比較が可能となる。

宮崎県における「臨床化学研究班 施設間差是正サーベイ」、宮崎県医師会精度管理調査のビトロスの評価を紹介するとともにその他課題について報告する。

【精度管理調査項目】

・実施項目:酵素項目:8項目、脂質項目:4項目、その他濃度項目:12項目、電解質:3項目の計27項目。

【測定試料について】

 ヒトプール血清(3濃度)

【結果】と【まとめ】

 基幹施設の目標値に対する「かたより(%)」で評価を行い、概ねヒトプール血清試料においての精度管理は良好な成績である。下記の項目においては注意が必要である。

・ TGについては、ビトロススライドはグリセロール未消化法であるため、精度管理試料によるグリセロールの濃度に比例して高値となることがある。

・AMY, ChEについては、JSCC標準化対応スライドではなく、測定方法が異なるため、補正係数入力をする事でルチン対応は可能と考える。

・CRPはビトロスの参考基準範囲が1mg/dl以下であり、一般の汎用試薬(0.3mg/dl以下)と参考基準範囲が異なることから高値を示す傾向があり、この点の課題は検討中である。今後もヒトプール血清試料を用いた精度管理調査継続に期待します。      

連絡先 0982-53-1096

11

クロールイオン選択電極におけるブロム剤の影響について

宮崎県立宮崎病院

○長友 明彦   荒木 加納子

【はじめに】

電解質の測定は、従来のイオン測定法や炎光光度法に代わり、イオン選択電極法が主流となり、自動分析装置に組み込まれて生化学検査項目と同時測定が可能となった。しかし、Clイオン電極は、薬剤や代謝物の共存による影響を受けることが知られている。今回、内服薬によると思われる血中Cl値が異常高値を示す症例を経験したので報告する。

【症例】

60歳、男性

【現病歴】

うつ病にて近医受診中

【既往歴】

出血性潰瘍、喘息

【経過】

めまい、食欲低下により当院救急外来受診。来院時の身体所見、神経学的所見に異常なし。補液中心の治療により全身状態が改善し、4日後に退院。血中Br濃度が92mg/dl(正常値 0.5mg/dl)であることが判明した。

【来院時の検査結】

AST 13IU/l,ALT 8IU/l,LD 185IU/l,UN 14.6mg/dl,Cre 0.8mg/dl,GLU 134mg/dl,Na 142mEq/l,K 3.59mEq/l,Cl >150mEq/l,(血液ガスでCl 111mEq/lを確),WBC 5920/μl,RBC 388万/μl, Hb 12.1g/dl, Ht 34.5%,PLT 17.5万/μl

【検討】

100mmol/l臭化カリウム(KBr)水溶液、塩化カリウム(KCl)水溶液の検討(1)100mmol/l臭化カリウム水溶液から選択係数を推測(2)5段階の希釈系列による直線性から選択係数の変動の有無を確認

【結果】

(1)塩化カリウム水溶液では、ほぼ100mmol/lの数値を呈したが、臭化カリウム水溶液では東芝C8000で327.7mmol/l、日立7600で200.7mmol/lであったことから、選択係数は、それぞれ3.3、2.0と推測した。(2)いずれの自動分析装置においても直線性がえられ、Br濃度に関係なく選択係数が一定であることを確認した。

【結語】

イオン選択電極は、メーカーにより差異はあるものの、電極のイオン選択性や直線性、同時再現性などの基本性能、電極寿命などにおいて、優れた電極が登場している。しかし、血中Cl濃度は、共存する薬剤、内因性代謝物などにより臨床的に有意な影響を受けることがあるので、特に異常高値を示す場合の評価には注意が必要である。

連絡先 0985-24-4181(内線 2057) 

12

アーキテクトHCV Ag試薬の基礎的検討

宮崎大学医学部附属病院 検査部

菅 文恵、緒方良一、五郎丸 亜季、守田政宣

【目的】
 HCV コア蛋白質の測定はC型肝炎の診断補助、進行予測、インターフェロン治療のモニタリング等に用いられている。当検査部においても全自動化学発光酵素免疫測定システム ルミパルスf(富士レビオ)を用いて測定してきたが、検体の前処理が必要でバッチ処理のため報告時間が遅れる難点がある。今回、よりスムーズ゙な結果報告が可能なアーキテクト・HCV Ag試薬を導入する目的で基礎的検討を行ったので報告する。

【対象と方法】
 1. 対象:HCVコア蛋白質定量依頼のあった患者血清。2.機器:Architect i2000SR(アボットジャパン)を使用。3. 検討内容:1)再現性、2)検出限界、3)共存物質の影響、4)直線性、5)ルミパルスfとの相関について実施した。

【結果】
 1)プール血清3濃度1.17, 4.44, 40.51 fmol/Lにおける同時再現性の変動係数CV %はそれぞれ66.13, 15.61, 4.56 %であった。日差再現性は2ロットの試薬で実施した結果、CV%はそれぞれ207.36, 14.44, 7.09 %と100.87, 4.65, 5.54 %であった。2)最小検出限界は希釈系列多重測定による3SD法から求めた結果3.19 fmol/Lであった。3)共存物質の影響はヘモグロビン500mg/dL(ヒト溶血ヘモグロビン)、乳び3000ホルマジン濁度(イントラリポス)、ビリルビンC 50mg/dL(和光純薬)、ビリルビンF 50mg/dL(和光純薬)まで影響は認められなかった。4)直線性は、ルミパルスfとの相関において高濃度域で2法間に乖離を認めたため、3ロットで検討した。その結果、ロットにより10000fmol/L、15000fmol/L、20000fmol/Lと差が認められた。5)従来法(ルミパルスf )との回帰直線と相関係数はロット4でY=0.816x+89.2(r=0.988)、ロット5でY=0.884x+184.2(r=0.992)であった。

【まとめ】
 同時再現性・日差再現性からカットオフ値域でのCV%が大きいことと、再検により陰性化する例が存在したため、カットオフ値付近の判定は添付書に従ったメーカー推奨の判定法を用いる対応が重要と考えられた。また日差再現性と直線性の結果より試薬のロット間差が示唆され、測定上限値に関しては各施設で確認後に運用する事が必要と考えられる。

【考察】
 前処理の自動化により他項目との同時測定が可能となり、従来法に比較して測定時間の短縮が計れた。その結果、診療科への結果報告がよりスムーズ゙になると期待される。

連絡先 0985-85-1870

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糖尿病神経症スクリーニング検査での知覚閾値測定機器
ペインビジョンの有用性について

医療法人養気会池井病院 臨床検査部

○奥野ひとみ、西田智子、斉藤由紀子、正覚明美、山下景子

【はじめに】

糖尿病神経症は糖尿病発症後、5年以内に起こる合併症

で全身に様々な障害を起こします。特に足の感覚が鈍くなると火傷や外傷を起こし易く壊疽から足切断に至るという重大障害を起こすこともあり、早期発見・予防が大切です。神経症の検査には神経伝導検査と腱反射・振動覚・モノフィラメントを使った検査(タッチテスト)などの知覚検査があります。NCVは高額機器導入・検査所要時間・技術熟練度・検査時の痛みなどスクリーニング検査としてはやや不向きで、通常良く行われている、知覚検査は、評価に主観が入ることが欠点です。今回、知覚閾値測定機器ペインビジョン(ニプロ)を導入し知覚異常の客観的評価を行い、若干の知見を得たので報告します。

【測定の概要】

末梢部(前腕およびアキレス腱部)に電極を装着し微弱な電気を流し刺激を感じた時点の電流値を電流閾値とする。末梢で感じる感覚から脳へ広がった感覚を数値で表わし、知覚異常の客観的評価をおこなう。

【対象および方法】

平成22年4月〜10月に知覚検査を行った268名のうち同時に神経伝導検査をおこなった98名について知覚異常と神経伝導異常についての比較検討をおこなった。

【考察】

当院は糖尿病専門病院として、他施設からの紹介もあり、受診時にすでに神経症を発症している患者様も多く、診療側の要望で平成19年に神経伝導検査を導入しました。

しかし、神経伝導検査は検査所要時間や神経刺激痛のための検査拒否などがあり、多くの患者様をスクリーニングするには不適でした。今回、痛みが少ない機器(ペインビジョン)でスクリーニングを行い、異常者についてのみ神経伝導検査を行うことで、患者様の神経伝導検査に対する協力も得られ、スクリーニング検査として有用でした。

また、検査時間も10分程度なので、診療前検査としても導入可能でした。

連絡先 0984-25-0627

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9年間無症状の後に失神 ・Torsade de pointes を認めた
孤発性QT延長症候群の1例

宮崎大学医学部附属病院検査部

尾方美幸、鈴木千代子、川上めぐみ、山本智美、梅木一美

 今回、我々はβ‐blocker投与により、9年間無症状で経過した後に、失神・Torsade de pointes(TdP)を来たしたQT延長症候群の1例を経験したので報告する。

【症例】 18歳、女性 【主訴】 失神
【家族歴】 心疾患(−),突然死(−),不整脈(−) 【妊娠・分娩歴】 胎児期に不整脈(+)、胎児腹水(+)。32週0日で胎児心拍徐脈のため緊急帝王切開術施行(BW: 1716g, APS: 4/7)。

【既往歴】
新生児期に2:1房室ブロックを伴うQT延長を認め、イノバン、プロタノール、キシロカイン投与にてコントロールされ日齢85で退院後、drug free で経過観察。

【現病歴】
9歳時に2回の失神のエピソード(音楽の授業中、睡眠中)あり。心電図でQTc:440msecと軽度延長を認め、QT延長症候群が疑われたが、LQTS遺伝子検査では明らかな異常は認めなかった。以後、運動制限(C区分)とβ‐blocker(インデルラル)の内服継続で症状なく当院外来でfollowしていた。

2010年6月、登校時に走った際、動悸・気分不良を自覚した後、失神。速やかに意識は回復したが、同日に当院外来受診。心電図に著変なく、運動という誘因があったため、厳重注意で経過観察となった。翌朝、通常歩行で登校中に、動悸・気分不良を自覚し失神。明らかな誘因がなく失神を認めたため、精査・加療目的で当院入院となった。

【心電図所見】
HR:80/min、右軸偏位、VPC二連発、

QTc:0.513msec 【経過】 入院時、モニター心電図上でVPCの頻発、TdPを認めた。プロタノールの内服とリドカインの持続投与、K>4.0コントロールのためスローケの内服を開始した。ホルター心電図ではVT(最大65拍)、VPC、TdPが散見され、抗不整脈作用強化のためメキシレチンの内服を開始した。以後、不整脈は全く出現せず、歩行程度の運動負荷心電図でも不整脈は誘発されなかったため、メキシレチン、プロタノール内服継続で退院となった。

【考察】
当院ではホルター心電図解析を同検査部で行っており、VT、TdPなど緊急報告を必要とすることがまれにある。患者の検査時の症状など良く聴取し、迅速に解析を行い、情報を提供することが重要であると考えられた。

連絡先 0985-85-9400

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僧帽弁輪形成リング縫合部の広範囲離開により心不全,

溶血性貧血を生じた1例

−経胸壁2D,3D心エコー図による多角的観察−

県立宮崎病院 臨床検査科

○金松和里、佐多富美、壹岐亮子、井上芳和、
末澤滝子、井上隆正、平松百合子

【背景】心エコー図検査の際,検査者は二次元画像を見ながら解剖学的位置関係を頭で考え検査する.近年,経胸壁3Dエコーの登場により立体的多角的な評価が可能となった.今回,僧帽弁輪形成リング縫合部の広範囲離開により心不全,溶血性貧血を生じた症例を経験し,経胸壁2D,3D心エコーで術前評価することができたので報告する.

【症例】82歳,男性【主訴】呼吸苦(NYHAU)

【既往歴】H15冠動脈バイパス手術(CABG)・僧帽弁輪形成術(MVP),H16腹部大動脈人工血管置換術

【現病歴】平成21年12月から貧血が進行し,輸血を繰り返されていた.精査の結果,全収縮期雑音,僧帽弁逆流増加と溶血性貧血を認め当院紹介となった.

【入院時血液検査】Hb 9.4g/dL,T-Bil 1.45mg/dL,AST 85IU/L,ALT 25IU/L,LDH 1754IU/L

【入院時経胸壁心エコー図】LVDd /Ds 52/43mm,EF 54%,左室後下壁に重度壁運動低下があり,僧帽弁輪形成リングの前交連側が広範囲にわたり弁輪部より離開し,重度僧帽弁逆流を認めた.逆流ジェットは弁全体から吹き,左室流入路内の人工弁輪に直接当たるジェットも観察された.3Dエコーでは弁輪部から離脱したコスグローブリングを立体的に描出することができた.

【考察】本症例はCABGに伴うMVP7年後に溶血性貧血を生じ,心エコー図にて形成リングの縫合部離開が診断され,再手術となった症例である.心エコー図では,前交連側で弁輪から大きく離脱し,後交連側でも一部離脱した人工弁輪が観察され,2D,3Dエコーを併用することで,術前により立体的な情報を外科医に報告することができた.手術所見は,両側交連部を中心に弁輪縫合部が離開し,心エコー図診断と解剖学的に一致した.後交連側ではパンヌスが弁の上にはって育成し弁が変形していた.

【結語】3Dエコーは,複雑な立体構造を簡便に評価できる有用な検査である.現時点では,画質の面で2Dに比べ劣っており課題も多いが,2D,3Dエコーを併用して評価することでより正確な診断につながることが期待される.


連絡先 県立宮崎病院 臨床検査科0985-24-4181 (内線2050)

ランチョンセミナー1

心エコーの基本と実践

宮崎市郡医師会病院検査室

田永哲士

正しい心腔計測を身につける ー 左房・左室の大きさ ー

1.傍胸骨左縁からの左室長軸断面は、正しい心腔計測にとっては万能ではない

・長軸断面描出し、短軸で正円を確認して計測、長軸のみでは、過小評価の可能性、短軸のみでは、過大評価の可能性(斜め切り)

2.計測時相をしっかり押さえる

・2Dでは拡張末期径は心電図のR波を参考に内腔が最も大きく、かつM弁が閉じている時相、収縮末期径はT波を参考にM弁が開く直前の時相

3.どこからどこまでを測るか、2Dでは内から内が原則(Mモード法より低値)

4.左室容量計測の実際

・心断層法(Biplane Modified Simpson法)

拡張末期は、M弁閉鎖直後、収縮末期はM弁開放直前で心内膜面をトレース、ポイントは、二腔、四腔の長軸の差が10%以内

5.左房の計測

・機器の“すそ引き”が少なくなっているため、内から内での計測、最近では、心断層法による左房径計測へと移行 

・心断層法による左房径の計測

心尖部四腔断面で、腔が最も拡大した時相

・心断層法による左房容量の計測

上記と同じで、Biplane Modified Simpson法を用い、肺静脈、左心耳を含まずに心内膜面をトレース

正しいドプラ計測を身につける ー 僧帽弁口・弁輪部ドプラ ー

1.たとえば 僧帽弁血流速波形 → 血糖値

左房径・左房容量 → HbA1cと例えられる

2.僧帽弁輪運動速波形について

・組織ドプラは、角度依存性あり

ビーム方向が悪いと、見たい長軸方向の運動ではなく短軸方向の動きに影響を受ける

3.左室拡張異常の評価(2009.ASE)

僧帽弁輪運動速波形は中隔側・側壁側を両方測定することを推奨

正確な壁運動評価とVisual EFをマスターする

1.心内膜の描出が不充分では、壁運動は過小評価(特に心尖部断面)コントラストの効いたやや硬い画像を描出

2.心室中隔が奇異性運動を呈し、左室収縮能評価に苦渋する場合Mモード法を用い、壁厚の経時的変化をみるとわかりやすい(良好であれば、収縮期の壁厚は増高する)

3.壁運動評価において注意したいこと、正しい評価のためのコツ

・短軸像が局所壁運動異常を検出しやすい心尖部断面で初めて壁運動異常をみたら、再度短軸像にもどって確認

・見落としやすい壁運動異常の部位心尖部、心尖部断面だけでなく、傍胸骨断面の心尖部よりのViewからも観察

4.壁運動異常と紛らわしい動き

・食事後すぐのエコー(特に肥満者)

多量の腹水貯留 → 膨張した胃が横隔膜を通して左室下後壁を押し上げる為 → 心内膜面の動きよりも壁厚の増加に主点

・多量の心のう液貯留 → 振り子様運動

5.Visual EF

・3Dで算出したEFともよく一致する報告あり 

・2Dで算出した数値データのEFが報告するのに問題がないか検証するのに役立つ

連絡先 0985-24-9119

ランチョンセミナー2

救急医療・災害医療 求められる医療機能との関わり

シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社

キーアカウントグループ 松尾久昭

求められる「医療機能」の明確化

 医療制度改革の一環として、全国の都道府県は、平成20年春に「保健医療計画」を立案している。その計画の作成に当たっては、医政局から「医療計画について」という通知が出されており、そこには、「具体的には、4疾病及び5事業のそれぞれについて、まず(1)必要となる医療機能を明らかにした上で、(2)原則、各医療機能を担う医療機関等の名称、(3)数値目標等を記載する。」と書かれている。

4疾病とは、がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病であり、5事業とは、小児医療、周産期医療、へき地医療、救急医療、災害時医療である。したがって、各都道府県の保健医療計画には、このそれぞれを行うのに必要な「機能」が明記され、またそれぞれの機能を担う医療機関の名称が記載されている。今年春に新しく登場したDPCの地域医療指数でも、救急医療や災害時医療を評価する部分がある。

 また、各医療機関の機能を地域住民に公表するため、昨年4月から、各都道府県のホームページの中に、すべての医療機関をカバーした、機能公表サイトが運営されている。これも医療制度改革の一環で義務化されたものである。

救急医療の医療機能

 救急医療に求められる機能については、病院機能評価の「付加機能」評価項目や、「医療の質に関する研究会」が作成した「救急医療評価スタンダード」などに整理された記載がある。いずれも検査室だけではなく病院全体の視点で書かれているが、個々の検査項目などもいくつか登場する。当日は、これらの内容の紹介と合わせて、三次救急で搬入される主な疾患や必要とされる検査項目について、お客様のお話や雑誌記事などから集めたものを紹介する。

災害時医療の医療機能

 医療の世界で災害というと、地震のイメージが強いが、自然災害だけでもほかに集中豪雨や津波などがあり、また事故やテロなどの人為的災害も、医療機関として特別な対応を迫られるケースがある。

 災害時医療に求められる機能については、災害拠点病院の要件などで列挙されているが、災害時には、「検査をどうするか」以前に、「医療人としてどうするか」が問われる部分が大きい。トリアージ、蘇生処置の手伝い、患者さんの受入れ・避難の援助・安全の確保などである。

 臨床検査の観点から、災害時に想定される臨床検査の状況を分類して見ると、@直接的な被災やライフラインの途絶による直接的な機能不全、A傷病者が殺到することによる間接的な機能不全、B災害救援活動としての機能、の3点が考えられ、それぞれについて準備すべきポイントは異なる。当日は、神戸や新潟県中越の施設の報告なども交えて災害対策のポイントを紹介する。

ランチョンセミナー3

”お役に立つ”臨床検査を目指して

熊本大学医学部附属病院医療技術部

臨床検査技術部門(中央検査部)

池田勝義

【はじめに】

 高性能な分析装置の普及と医療情報システムの充実は、臨床検査分野に検査データを効率よく迅速に提供できる体制をもたらした。しかし、高品質の検査データを提供するためには、検査担当者の分析に対する高い知識と的確な操作および装置の継続的な保守点検が必須条件であり、高度な検査担当者の育成とそれを維持する組織体制が必要である。このことは、我々のプロとしての社会的任務であろう。高品質の検査データが提供できることを基盤として、チーム医療への参画、検査法の評価と開発、新しい臨床検査知見の発見、予防医学への参入、臨床検査の啓発活動など、世の中に“お役に立つ”臨床検査へと変貌していけるものと考える。

【精度の維持向上】

 検査精度の維持向上のためには次の要素が明確化され、運用されていることが必要と考えられる。@検査環境規格の明確化と維持管理、A機器・器具等の管理、B試薬・方法の管理、C検査前の管理、D検査過程の管理、E検査後の管理、F過誤(インシデント)および苦情の管理、G組織体制の明確化、Hスキルの管理、I監査体制と是正運用、J施設間の連携。

 これらは基本原理に基づいた各々の手順書やマニュアルを設定し、日常業務の中で現実的に運用していくことが重要である。また、技師会を中心とした地域連携の中で、標準化はもとより、検査の連係プレーや育成プログラムを整備することによって、地域的な検査の質が担保されることになる。

【“お役に立つ”臨床検査へ】

 日進月歩の検査機器や試薬の評価を行い、検査法の開発に携わることができれば、より検査データの質を向上させることができる。また、生活習慣病などの早期発見を目的とした予防医学的活動は、医療全体の効率化、医療費の削減という視点から重要な課題であると同時に、健康の維持管理と疾患の早期発見に寄与できれば、住民のQOL向上と医療費削減にも貢献できる。さらに、診療科や他の部署との連携は、チーム医療実践には欠くことができない要素であり、医療全体の質を上げることにつながる。

これらのことは、臨床検査の学校教育、現場における指導教育体制、および地域における教育と支援のシステム作りとも密接に関わりあっており、臨床検査技師の総力として、協調的に行なっていくことが求められる。

教育講演

「本邦における輸血医療の現状について

     ー特に小規模医療施設における輸血管理体制と血液使用状況についてー」

虎の門病院輸血部 

牧野茂義

 今から50年前の1960年代は売血による血液を輸血することにより半分の患者が輸血後肝炎を併発していた時代であった。その後、献血制度が設立され、輸血用血液製剤は日本赤十字社(日赤)が中心に管理してきた。核酸増幅検査(NAT)を含む輸血検査、従来の200ml採血から400ml採血と成分輸血への切り替え、細菌汚染防止の初流血除去、非溶血性輸血副作用防止のための保存前白血球除去、輸血後GVHD防止目的の放射線照射の導入を行ってきた。ウイルス不活化処置の導入はまだであるが、輸血用血液製剤の安全性は飛躍的に向上し、世界トップレベルの安全性を獲得した。その上で血液製剤を使用する各医療機関の輸血管理体制の整備のために、「輸血療法の実施に関する指針」や「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)」が施行された。

本邦の血液製剤の80%以上を使用する300病床以上の医療施設(大規模施設)においては、輸血業務の一元管理、輸血責任医師の任命、輸血担当技師の配置、輸血療法委員会の設置、輸血検査の24時間体制などの院内輸血管理体制は85%以上の施設で実施されており、この5年間で急速に改善された、しかし、300病床以下の小規模施設では50〜80%の達成率であり不十分である。各施設で解決できない適正輸血や輸血管理体制問題は、地域の合同輸血療法委員会の活動に期待されている。大規模施設の輸血責任医師や検査技師に、日赤および県厚生部門職員が参加し委員会を組織し、輸血問題を共通の意識を以って取り組んでいく。

最近の血液使用状況に合同輸血療法委員会活動効果が見られ始めている。輸血用血液製剤の需給状況をみると、少子高齢化に伴い、輸血が必要な患者の増加と献血人口の減少により深刻な血液不足が近い将来危惧されている。対策としては、適正輸血のさらなる徹底をはじめ、廃棄血削減、EPO製剤の導入、血液製剤の有効期間延長が挙げられ、最も重要な若年者の献血離れに対する献血推進運動が重要である。

 最後に、血漿分画製剤の国内自給率が低い製剤があり、過去の薬害エイズ事件や薬害C型肝炎事件を繰り返さないためにも、国内自給を目指すべきである。しかし、DPC導入により価格の廉価な海外輸入アルブミン製剤へ切り替える施設が続出し、国内自給率が低下傾向である。実際、患者にアンケート調査を行ったところ、採血国や献血・非献血の区別の情報を知りたい割合が多く、国産製品による治療を望んでいる割合が90%を超えていた。輸血に関するインフォームド・コンセントの重要性が明らかになっている。われわれ医療従事者は国際的倫理観から血液製剤は100%国内自給を目指すべきというWHO勧告をもとに作成された血液法の基本方針を重視すべきである。今回、本邦における輸血医療の現状についてデータを提示し、これから目指すべき輸血医療の未来を一緒に考えたい。